小説を楽しんでプラス

主に私が作成した超短編小説(ショートショート)を記事にします。ほかにお気に入りの小説を紹介します。

ストーカーと探偵

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 ここは雑居ビルの4階にある探偵事務所。
 若い女性が相談にやって来ていた。女性は20代前半、おとなしい印象だが、少しいらついている様子だ。
「ストーカーの相談で警察に行ってみたけど、相手にされなかったので、ここの探偵事務所に来たということでしょうか」
 探偵はテーブルに両肘をついて、前で指を組みながら女性にたずねた。
「はい、警察は私の話しを全く信じてくれなかったので、腹が立って、その足でここに来ました」
 女性は見た目の印象とは違い、きつく早口で話した。
「そうでしたか、警察には、どのように相談をされたのでしょうか」
 探偵は女性を落ち着かせようとゆっくりした口調で話した。
「ある男が毎晩、私の自宅の前に車を停めて見張ってたり、電話してきたり、外出時には後ろからついてくることもありました」
 探偵は少し身をのりだした。
「それは、ストーカーかもしれませんね。いつ頃から、そんな事が起こってるんでしょうか」
「先週の火曜日からです。それからは毎日、そんな夢を見るんです。絶対にこれはストーカーだと思って相談したんですが、警察には被害があってから相談してくださいと言われました。でも、被害があってからだと遅いんです」
「……ゆ、夢の話ですか……」
「そうです、夢です。夢だとダメなんですか」
「そうですね、夢の話だと、さすがに警察も動けないでしょうね。警察も暇じゃないでしょうしね」
 探偵は少しあきらた様子だ。そりゃ警察も動かないわと思った。
「それで、腹が立ってここに来たんです。夢でも不安でしかたなかったのに、警察は私をバカにしてるようでした」
 女性は、また興奮してきた。しかたなく、探偵は女性を落ち着かせるために、もう少し話しを聞くことにした。
「夢で見たストーカーの男に心当たりはありますか」
「いえ、ありません。見たことない男でした」
「ここは警察と違って、お金さえ支払っていただければ、何でもやりますけど」
「よろしくお願いします」
 探偵は、夢の話しに付き合うのはバカらしいとも思ったが、存在しないストーカーが相手なので、これほど楽な仕事はないとも思った。
「それでは具体的にどのように進めるか決めていきましょうか。何かご希望はありますか」
「はい、私が外出する時は後ろからついてきてほしいです。それと夜、帰宅してからは   自宅の前でいてほしいです。たまに自宅に電話をいれてもらえますか」
 探偵は少し面倒臭いなと思った。
「24時間ついておくのは難しいですが、よろしいですか」
「はい、会社の帰りに後ろからついてきて、帰宅してから0時位まで自宅の前にいてください。それから、私の携帯に夜、何度か電話をいただけますか」
「わかりました。とりあえず、あなたの1週間の行動予定を教えてください。それに合わせて、あなたの警護にあたります」
 探偵は存在しないストーカー相手なので、車の中で居眠りしておけばいいだろうと思った。
「それでは、今晩からあなたの自宅前で見張っておきます」
「よろしくお願いします」
 それから5日が過ぎたが、当然のことだが、何も起こることはなかった。ストーカーらしき男も現れなかった。
 探偵は今日も女性の自宅前に車をとめて、女性に電話をした。
「今日も怪しい人物は見当たりません。安心しておやすみ下さい」
「ありがとうございます。それではおやすみなさい」
 探偵は電話の後、いつも通り居眠りしていた。ウトウトしていると、車の窓をたたく音で目を覚ました。
「おたく、こんなとこに車とめて何してるの」
 警察官だった。
「すいません、少し眠気が襲ってきたので、車をとめて休んでたら眠ってしまいました」
「本当に? 最近、ずっとここに車停めてない? ここ数日、怪しい車が停まってるって住民から通報があったんだけど」
「いえ、たまたま今、停めただけです」
 探偵は少し慌てていた。
「免許証出して」
 警察官は、あきらかに疑った様子で、懐中電灯の灯りを探偵にあてた。
 探偵は内ポケットにある財布から免許証を出して警察官に渡した。
「住所はこの近くだね、こんなとこで居眠りしなくても、すぐ帰れるだろ。本当は何してたの」
 守秘義務があるから依頼者のことは言えない。
「本当に眠くて、眠ってしまったんです」
 警察官は眉間にしわをよせ、探偵を睨み付けた。
「嘘ついたらダメだよ。さっき、ストーカーに自宅前で見張られていると女性から通報があったんだよ。車種もこの車だし、携帯の履歴見せてくれる。女性に無言電話もかかってたみたいだし」
 警察官は探偵の携帯の履歴を確認して、メモしてある電話番号と照らし合わせていた。
「あーやっぱり、何度も女性に電話してるじゃないか。ちょっと署まできてくれる」
「えっ」
 探偵はパトカーに乗せられて連れていかれた。
 その様子を女性は窓から見て笑っていた。
「やっと警察は私の言うことを信じてくれたわ。よかった」