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人生も後半戦

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

超短編小説 本気かな、真剣かな


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「どうも~、カナケンでーす」

「俺の本名が真中健で、相方のこの女が、本木加奈です。2人の下の名前をくっつけただけのコンビ名ですが、覚えてやってください」

「加奈ちゃんを可愛いと言う男がおったら、俺はビックリして気絶するわ」

「失礼やね、あたしの可愛さは、世界で10本の指に入る言う人だっていてるんやで」

「5本やなくて10本かいな。けど、そんな物好き、どこにいてるんや」

「あたしのお父さんよ、見る目あるでしょ」

「お、お父さんかいな。加奈ちゃん、一人娘やろ、その一人娘が1番可愛いんやないんか。悲しいけど、確かに見る目はあるわな」

「10本の指に入るいうことは、10番目やいうことやないんやで、5番目かもしれないし2番目かもしれないんやで」

「加奈ちゃん、2番目や5番目やったら、5本の指に入るって言うと思うで」

「そうなんかな。けど、あたしは1番ではないのはわかってるねん。悔しいけど、1番が誰かは知ってるから」

「ほぅ、それは誰なんや」

「それはやな、絶対に言われへんねん。本木家の秘密やさかい。だから帰るわ、サイナラ~」

「おいおい、帰るんかいな。どうもありがとうございました」

「クスクス」「パチパチ」

 

「お疲れさん。全然うけへんかったな。最後のクスクスとパチパチだけやで。これやったらシーンと静まり返ってくれた方が、まだ気持ちええわ」

「やっぱり、あたしらには才能が無いんやろうか」

「悔しいけど、これが俺達の今の実力なんやろな」

「もっと稽古するしかないのかな。健ちゃん、今から稽古しようよ」

「すまん、これからバイトが入ってるんや。バイトは明日の明け方までやから、明日の昼からやったら稽古出来るで」

「ごめん、明日はあたしが1日中バイトやねん」

「そっかー、バイトせえへんと食べていかれへんから仕方ないわ」

「でも、バイト辞めた方がええんかな。先輩方は売れるようになるまで、すごい苦労してたって聞いたことがある。あたしらも、もう少し苦労せなあかんのかもしれへん」

「そやな、先輩達は売れるようになるまで、お金無いから雑草食べてたとか、風呂入られへんから、真冬でもシンクで体洗ってたとか聞いたことあるわ」

「そんな苦労があったから、あの方達は今があるんやろね」

「そやな、俺らはまだまだ甘いんや。よーし、来月の漫才コンテストまで本気でやってみよか。今から1ヶ月間、本気でやって、それでダメやったらあきらめようや」

「わかった、あたしも本気でやるわ。健ちゃんはバイト辞めるの?」

「いや、そこまでは、ええんとちがう。とりあえず、今から本気モードになってみるわ」

「わかった、あたしも本気モードになるわ」

「来月の漫才コンテストでカナケンの運命は決まるんやで」

 

「漫才師は立ち位置が変わるだけでも、気になって落ち着かへんのやけど、加奈ちゃんは鈍感やから何があっても気にならないみたいですわ」

「健ちゃん失礼やな。あたしも落ち着かない時あるんやで」

「えっ、そ、そんな時ないやろ」

「いえ、あります」

「い、いつ、ど、どんな時やねん」

「それは今やねんで。あたしが今、落ち着いて漫才出来ひん理由わかりますか?」

「い、いやぁ、わ、わからへんわぁ」

「そしたら考えといてな、ほな帰るわ、サイナラ~」

「おーい、途中で帰るんかい、ちょっと待ちいや。何でか教えてぇ」

「知らんわ、自分で考えて」

「どうも、ありがとうございました」

「シーン」

 

「あかん、クスクスもパチパチも無かったで。完全に静まり返ってたで。やっぱりクスクスでもパチパチでもあった方が良いわ」

「結局、1ヶ月間、本気モードでやったけどダメだったね。あたし達には才能が無いんやわ」

「……」

「健ちゃん、これで漫才師やめる決心ついたんか」

「……」

「健ちゃん、落ち込まんといて。漫才がダメでも、人生やり直せるよ」

「加奈ちゃん、俺は落ち込んでないよ。もしかして俺達、これまで真剣にやってなかっただけかもしれへん。今から真剣にやったら売れるようになるかもしれへん」

「今まで真剣じゃなかったの?」

「そう、真剣じゃなかったんや。今から1ヶ月間、真剣にやってダメやったら、この世界をあきらめよ」

「よし、わかった。あたしも今から真剣にやってみるわ」

「この1ヶ月間でカナケンの運命は決まるんやで」

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