小説を楽しんでプラス

主に私が作成した超短編小説(ショートショート)を記事にします。ほかにお気に入りの小説を紹介します。

小説を読もう「空飛ぶタイヤ 池井戸潤」の言葉表現4

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空飛ぶタイヤ 上下合本版 池井戸潤

小説が好きで小説家の表現の仕方をまとめただけの資料です。

中村は頭の回転が速い。話の中から問題の本質だけをこすフィルターが付いているような反応だ。

「構いません。検討していただけますか」
赤松は思わず膝を乗り出し、中村と進藤に期待の眼差しを向けた。

視線を上げると、遠慮がちに宮代が顔を覗かせている。
「はるな銀行さんから電話がありました、社長。融資審査の結論が出たと……」
赤松はふいに緊張した面(おもて)を上げてきいた。

「もう? もう……結論が出たのか。それでどうだったんだ、宮さん」
宮代の表情は、そのときなんともいえず柔和になった。
「承認です、社長」
「よかった」
赤松の全身から力が抜け落ちた。

デスクの上には十枚近い「伝言メモ」が置かれていた。「赤松運送から問い合わせ有り」のメモはその真ん中辺りに見つけたが、一瞬見ただけで、迷うことなくゴミ箱に捨てる。

そりよりも、重要なのは一番上に乗っていた小牧からの一枚だ。連絡乞うとなっていた。
一回鳴るかならないかという早業で、小牧が出た。
「不正アクセスがバレたかもしれない」

「いや」
沢田は短くこたえ、「なんでバレた」ときいた。
「わからん」
電話の向こうで小牧は声を潜める。

受話器を置いた沢田は、自分が極度に緊張していることに気づいた。落ち着かなくなり、広げていた仕事が手に付かなくなる。何度も壁の時計を見上げつつ、ため息をついた。鉛のように重い時間が流れる。そうして、小牧からの二度目の電話は、午後九時前にかかってきた。

もう一人の男がいて沢田を待っていたのである。
その顔を見た瞬間、沢田は小牧にかける言葉を飲み込み、代わりに戸惑いの表情を浮かべた。

何のてらいもなく肩の力の抜けた口調の杉本は、ざっくばらんにいって沢田を正視する

「私の個人的意見だと思ってきいてくれますか」
杉本は手の中のジョッキを見つめたままいった。

小牧は飲みかけのジョッキを宙で止めたまま唖然とした顔を杉本に向けている。
「あの横浜の母子死傷事故、正直、どうなんだ」

「無駄な抵抗かも知れませんが、まあ、いろいろやってますよ」
杉本は曖昧にぼかした。

小牧は、沢田が書いた文面な最後まで目を通した後、しばし口をつぐんだ。鼻を曲げて二度短く空気を吸い込み、口元を引き締める。それから「本当にやるのか」ときいた。

小牧は真顔で冗談をいった。

じっと沢田が視線を注ぐ花畑は、おもむろに書類をセンターテーブルに滑らせ、右手の親指と人差し指を眉のあたりに押しつけた。この部長の頭の中ではいま、この手紙が手を離れた場合の様々なシミレーションが行われている。

しばらくは誰も口を開かなかった。男達の熱い息づかいだけが続き、やがて「君のいいたいことはわかった」と花畑の言葉がそろりと呟かれた

狩野は悪意の笑みを浮かべた。

「どうもありがとうございます」
礼をいったのは赤松ではなく進藤のほうだ。進藤はその書類を丁寧に手元に引き寄せると職業的な正確さで印鑑の洩れをチェックする。それが完了するのを待って、今度は赤松が、「窮地を救ってもらいました。ありがとうございます」と膝に両の手をつき、深々と頭を垂れた。

よく晴れた日だったが、風はない。そんな昼下がりの街角で凝り固まった両肩をほぐすため首を回しながら、赤松はほっとして思った。

「社長ちょっといいですか」
銀行から戻ると、赤松が帰社するのを待ちかまえていたらしい宮代が低い声でいい、背後の社長室を指した。しっかりとドアを閉め、赤松の反対側にかけると険しい表情になる。

「そうか」
深々としたため息とともに赤松がこたえると、重たい空気がその場を支配した。

「課長、赤松運送から電話がかかってきてますが」
北村が、丸っこい指で眼鏡を押し上げながら緊張した声でいった。
「外出中」沢田はこたえた。

「ちっ」という舌打ちとともに受話器が置かれた。

赤松が入っていくと、表情を消した目が動き、口元が歪んだ。

狐を思わせる、しゅんと細い面持ちの中で細い目をさらに細くして門田を見ている。

「どうかしたの、高嶋さんが」
そうきくとやっぱりな、というように藤木は両腕を組んだ。

「ホープ自動車のどんなことですか」
すぐに記者はこたえなかった。
お互いを推し量るような雰囲気がくすぶる中、記者はそれを口にしたときの反応を想像するかのように赤松と宮代を交互に見る。

「ハ、ハブのどんなことですかね」と宮代がいがらっぽい声で口を挟み、がらがらと喉を鳴らした。突如、緊張を強いられて痰がからまったのだ。

「ほんとうか」
浜崎の名前をきいた途端、野坂は顔色を変えた。そして、深刻な表情になって斜め上の虚空を睨み付ける。

「そう。つまり」
浜崎は言葉を探すようにしてテーブルの一端に視線を向け、再び沢田がわかるように説明を続ける。