小説を楽しんでプラス

主に私が作成した超短編小説(ショートショート)を記事にします。ほかにお気に入りの小説を紹介します。

幸福度を上げる神様

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 ① 神様のノルマ

「日本人の幸福度が低すぎると世界から非難を浴びている。今のままでは、我々、日本の神様のメンツが丸潰れだ。各々の担当地区の幸福度のノルマ達成に全力をつくしてくれ、話しはそれだけだ」

 日本の神様のトップからの話に集会場に集められた各地区担当の神様達は他人事のように返事する。
「はい」と返事しておけば大丈夫だろうと。
 しかし、
「あー、それから、特に幸福度の低い地区の担当者は、後で呼び出すからな」
「えーっ」
 これで他人事ではなくなるかもしれない。皆、呼び出されてもおかしくない状況であることは自覚していた。
「わかったか」
「はーい」
 呼び出されないことを祈るだけだ。日本の幸福度が低いことで、上層部もピリピリしている。これまで呑気に構えていた上層部も世界中から非難されはじめて、ついに重い腰をあげた。
 

「君の担当する西地区の幸福度が低すぎるので呼び出したんだが」
「あっ、はい、申し訳ありません」
「謝らなくていい、何故、こんなに低いのか、それを、ちゃんと説明しなさい」
「いやー」西地区の神様は頭を掻いた。
「さぼってたんだろ、西地区の人間をフォロー出来ていなかったんじゃないか」
「いえ、そんなことはありません。しっかり人間を観察しフォローしてまいりました」
「しっかり観察してフォローしていれば、こんなに低くなることはありえんだろう。わかってると思うが、担当地区の幸福度が低すぎると、君は神様でいられなくなる。そして、そんな君を神様と認定したわしの立場も危うくなる。今すぐ幸福度の低い人間と直接会って対策してくれ」
「人間に直接会って、ですか」
「そうだ」
「人間に直接会うことは、禁止ではなかったでしょうか」
「禁止だが、そんなこと言ってられないだろ。それとも、今のやり方で、君は西地区の幸福度を上げることが出来るのか」
「いえ、わかりました。人間に直接会ってみます」
「よし、ノルマは幸福度2割アップだ。よろしくな」

「困ったなぁ、これまでさぼってたのが、ばれてしまうな。はぁー、これが西地区リストか」
 西地区の神様は、はじめて見る西地区リストのページを何度もめくっては閉じ、溜め息をついた。
「この中から、どの人間に会いに行けばいいんだろう。今から一人一人確認してたら時間ないしな」
 最後は目を閉じたまま、適当にページを開いた。
「よし、この男にしよう」
 横山彰 48歳、結婚20年。妻の優香、長女の祐実との3人家族。夫婦仲がうまくいかず幸福度が低い。ここ最近、長女の祐実との会話も無く、幸福度が一段と下がってきている。
「どこにでも居そうな冴えない中年男なんだろうな。しかし、なんとか幸福度を上げてやらないとな。まずは、こいつの会社の前で待ち伏せしてみるか」