小説を楽しんでプラス

主に私が作成した超短編小説(ショートショート)を記事にします。ほかにお気に入りの小説を紹介します。

宇宙人のこころざし

 ここは、銀河系にある地球の1000分の1程の小さな星「イイナリ星」

 王様「今年の地球派遣参加者は何名だ」

 秘書「今年10名の予定でしたが……、実は……1名が不参加の返答なんです」

 王様「不参加だとぉ、どういうことだ」

 秘書「詳細はわかりませんが……」

 王様「わからない、……だと、地球派遣は誰もが憧れる研修だぞ。そして帰ってきたら、地位も収入も大幅にアップするんだぞ。それなのに何故だ。しっかり調べておけ」

 秘書「申し訳ありません。すぐに調査いたします」

 秘書はすぐに地球派遣参加者リストを取り寄せる手配をした。

 王様「マスコミは地球派遣の素晴らしさや派遣された後の厚遇をしっかり伝えているのか」

 秘書「はい、マスコミもしっかり伝えてくれてます。地球は美しい星で、食べ物は美味しいし、景色が綺麗で、地球人は勤勉で思いやりがある。そんな素晴らしい環境下での研修とイイナリ星に戻ってからは、王様直属の職に就き、安定した生活が送れる。そんな内容で伝えてくれております。現に他の9名は選ばれたことを非常に光栄に感じているようで、お礼の手紙が届いております」

 王様「私は、その手紙を見ていないぞ」

 秘書「申し訳ありません。10名分揃い次第、お持ちする予定にしておりましたが……1名が、そういう状況でしたもので……」

 王様「地球派遣に行って地球の素晴らしさを肌で感じてもらいたんだ。そして、この星を地球のような素晴らしい星にする為に、私に協力してほしいんだ。秘書よお前も地球派遣に行ってよかっただろ」

 秘書「はい、私も地球派遣に参加させて頂いたことを、有り難く光栄に思っております。そのおかげで今の私があります。国王のお考えは本当に素晴らしいです。あっ、リストが送られて来ました。不参加で提出した者は『ココロ・ザーシ』という女性ですね」

 王様「すぐに『ココロ・ザーシ』を呼んで、事情を聞こう」


 秘書「ココロ・ザーシさん、ご足労いただき有難うございます。本日、お呼びしたのは、地球派遣に不参加の件なんですが」

 ココロ「地球派遣の参加は任意でしたよね」

 秘書「そうです、参加は任意ではありますが、これまで全員が参加を希望しております。不参加の返答が始めてなもので……、理由をお聞きかせ頂ければと思いまして」

 ココロ「わたしは、この星をもっと素晴らしい星にしたいと思っています」

 王様「ほほぅ、良い心がけだ。その為にも地球派遣に参加してほしいんだ」

 ココロ「地球派遣に行く時間がもったいないのです。そんな時間があれば、この星に残って、いろんな改革に取り組み、皆が住みやすい平和で楽しい星にしたいのです」

 王様「地球を視察することで、『私の星』を、君が言うような、素晴らしい星にするヒントが見えてくるはずだ」

 ココロ「王様、『私の星』ではなく『私たちの星』です」

 王様「……」

 秘書「ココロ・ザーシさん、地球派遣は選ばれし者しか参加出来ないものです、私どもで優秀な人材だと判断した者に、今後、この星を地球のような豊かな星にしてほしいと思い、派遣しているのです」

 ココロ「わたしなりに地球について調べてみましたが、マスコミが報道しているほど良い星ではありません。戦争やテロが各地で起こっていて、妬みや憎しみの多い星です。マスコミの情報を鵜呑みにするのは危険です」

 王様「確かに、地球は君の言うような一面もある。それは我々も理解している。地球はたくさんの国に別れていて、我々が派遣しているのは『NIPPON』 と言う国だ。地球の中でも平和で美しい国だ。私は『NIPPON』 のような国を目指しているのだ」

 ココロ「『NIPPON』 ですか」

 王様「そう『NIPPON 』だ」

 ココロ「わたしの周りにも、地球派遣に参加した人が多くいます。その人たちが派遣から帰ってきて、この星を良くしようとしているかと言えば、そうではありません。平和ボケして、腑抜けになって帰ってきた印象を受けます。派遣に行く前は、この星を素晴らしい星にしようと志を持っていたのですが、帰ってきてからは、自分の地位や収入を守る事だけ考えるようになってしまっています」

 秘書「私も地球派遣に参加した者です。ココロ・ザーシさんの言うような事は決してありません。『NIPPON 』で、多くの事を学び、幸せを実感して帰ってきました」

 ココロ「とにかく、わたしは参加はいたしません。この星に残って、この星に住む人達にとって住みやすい星にします」


 王様「やっかいな奴が現れた」

 女王「どうかされましたか」

 王様「優秀な人材は、一つ間違えれば、わしに反旗を翻す。地球派遣の目的は、そうした優秀な人材をイエスマンの腑抜けにしてしまう事だ。そして、わしの命令通りに働く優秀な家来にしてしまうのだ」

 女王「あなたの考えは、素晴らしいものですわ。そのおかげで、この星は永遠に、あたしとあなたの物です。邪魔する者はいませんわ」

 王様「しかし、邪魔しようとする女が現れた」

 女王「まぁ、やっかいねぇ。大体、女の方がやっかいよ。男は単純だから地位やお金で心が動くのよ。でもねぇ、女はそんな単純じゃない」

 王様「今から法律を変えて、参加を義務にするしかないな。それと期間もこれまでの3年間ではなく、しっかり腑抜けになったのを確認してから星に戻すようにしよう」

 地球『NIPPON 』にて

 派遣者「ココロ・ザーシさん、まずはこの『NIPPON 』を変えるのですか」

 ココロ「そうよ、まずこの『NIPPON 』が変わらないと、私たちのイイナリ星はダメになる。イイナリ星から派遣されたメンバーが腑抜けにされないように『NIPPON 』を変えましょう。そしてイイナリ星を変えましょう」