感情線の先端が人差し指と中指に入りこむ人は潔癖症で、正義感が強く曲がったことが大嫌い。不正が許せないし異性関係でも浮気や不倫は絶対許せません。
人の好き嫌いもはっきりしています。好きな相手には徹底的に尽くし仲良くしますが、嫌いになると口もききたくないといったタイプです。
これからの物語はこの感情線を持つスーパーサワダのレジの責任者、竹下泰子の物語です。
竹下泰子は午前中に来店したお客さんのわがままに怒りを覚えていた。その時の店長小坂の対応も不満で、後で小坂にそれをぶつけてしまう。正義感の強い性格が良いところもありますが、行き過ぎてしまうと人間関係で失敗するかもしれません。
① わがままな客
昨日の大雨の影響でお客様が今日の午前中に集中しているようだ。スーパーサワダのレジは大混乱していた。
店長の小坂司郎もレジ周りで買い物かごを片付けたり、お客様を案内したりと大忙しだ。
「いらっしゃいませ、ありがとうございます。こちらのお荷物は、重たいので、あちらまでお運びいたしますね」少し汗ばみながら何とか混乱を防ごうと必死だった。
「ちょっとー」背後から、低い声が聞こえた。
小坂が振り返ると、年配の女性客が、眉をつり上げて近付いてきた。
髪の毛はライオンのたてがみのようにボリュームがあり紫色をしている。目のまわりはピンクなのか紫なのかよくわからない色で彩られている。三白眼で睨まれ浅井は少し圧倒された。
「わたし、急いでるの、先にレジをやってちょうだい」女性客はそう言うと、買い物かごを浅井の胸元に押し付けた。
「申し訳ございません。少し混雑しておりまして、あちらにお並びいただき、もうしばらくお待ちいただけますか」小坂は深々と頭を下げて、レジの一番後列へ案内しようとした。
「混雑していることくらい、見ればわかるわよ。だから、あなたにお願いしてるんじゃない。あなた店長でしょ。なんとかしなさいよ」女性は小坂の名札を見ながら捲し立てた。
「あっ、はい」小坂は眉間に皺が入りそうになったのを堪え、口角を上げた。サービスカウンターを見ると空いているようだった。レジ責任者の竹下がいる。サービスカウンターにまわってもらおう。小坂はそう考えた。
「お客様、それではあちらで精算をさせていただきますので、あちらへどうぞ」小坂はサービスカウンターの方に手をかざし、サービスカウンターへ案内しようとした。
「あそこまで行かないといけないの」女性は面倒臭そうに言った。
小坂はもう一度口角を上げてから、「あちらなら、並ばずにレジ精算出来ますので……」
「わたし、ここにいるから、あなたがこれで支払い済ませてきてくれる」女性客は小坂の話しを遮り、そう言うと、派手で分厚い財布から1万円札を出して小坂に手渡した。
小坂の表情が一瞬曇ったが、もう一度口角を上げた。「はい、少々お待ちくださいませ」
小坂は1万円札と店内かごを受け取り、足早にカウンターへと向かった。
「竹下さん、この商品のレジ精算をお願いします」小坂はカウンターの上に店内かごを置き、サービスカウンターに立つ竹下に言った。
竹下は少し怪訝な表情を浮かべていた。
「これって、配送や進物用じゃないですよね。それならレジに並んでもらった方がいいんじゃないですか。ここのレジは配送と進物用ですから」
そう言う竹下に対して、小坂は口に人差し指をあてた。
「あちらのお客様がお急ぎのようなんで、ここで精算してあげて下さい」小坂は声のトーンを落として言った。
「でも、他のお客様はお並びいただいてますし、他のお客様に失礼じゃないですか」
小坂は、また口に人差し指をあてた。
「あちらのお客様のご要望だ。すぐに精算してくれ」
女性客は、腕を組んで小坂の方を見ていた。離れていてもイラついている様子がわかった。
「でも、それって……」
「いいから、早く精算しろよ」小坂は竹下の言葉を遮り、きつい口調で言った。普段温厚な小坂のきつい口調に、竹下は驚いた。
「わ、わかりました」
竹下は小坂に言われた通りにレジ精算を始めたが、口元は歪んでいた。
「3760円ですけど」竹下は低いトーンで小坂に金額を告げた。
「じゃあ、これ1万円で」
竹下は面倒臭そうに片手で1万円札を受け取り、小坂に釣銭とレシートを渡した。
「ありがとう」
小坂は商品を袋に詰め、釣銭とレシートを持って、女性客の方へと向かった。
女性客はスマホを手にして笑っていた。それを見た竹下は一段と口元を歪め、頬をふくらませた。
小坂は女性客の横で、電話が終わるのを待っていた。女性客は小坂の気配に気付き振り向いた。
「それじゃ、また連絡しますわ」
女性客はスマホを鞄に入れた後、小坂から商品の入った袋と釣銭とレシートを受け取った。
「ありがと」女性客は、そう言って出口へと向かっていった。
小坂は後ろから「ありがとうございました」と声を掛け、お辞儀した。
竹下はその様子を見て、大きく息を吐いた。
② お客様は神様なのか
午後からは、忙しさも落ち着き、小坂は店長室で資料に目を通していた。来月の広告の内容のチェックだ。商品や価格が間違いないか、この内容でお客様に満足してもらえるのか等、チェックしていた。
チェックも終わりかけた頃、店長室のドアをノックする音が聞こえた。
「はい、どうぞ」小坂がドアに向かって声を掛けた。
「失礼します」竹下が口元を歪めながら入ってきた。ドアの前に立ったまま「店長、少しお時間よろしいですか」と続けた。
小坂は竹下の表情や声のトーンから朝のお客様の対応についてだと察した。小坂は、その件は話したくなかったので、別の話題を持ち出した。
「どうした、今日の新入社員の飲み会の件か? もちろん出席させてもらうよ」努めて明るく言った。
今日は、先月入社したレジを担当する新入社員2名と小坂、竹下の4名で親睦会をやることになっていた。店全体での歓迎会は先週やったが、その時は若い者同士で盛り上がり、小坂は新入社員とほとんど話すことがなかった。店長の小坂と話す機会が必要だと感じた竹下の発案で、簡単な親睦会を開くことになった。その予定が今日だった。
「親睦会の出席はよろしくお願いします。でも、今はその件ではありません。午前中のお客様の対応の件で参りました」
竹下は、午前中の小坂の女性客の対応について、納得していなかった。この気持ちのままで親睦会をしても盛り上がらないと思い、それまでに小坂と話しておきたかったのだ。
小坂はやっぱりその件か、と思った。
「朝の女性客は、わがままではないでしょうか? 店長はあんなわがままも許すのですか?」竹下は小坂の目をじっと見て言った。
小坂は少し落ちつかせようと、竹下に椅子に座るように手で促した。「まあ、座りなさいよ」
竹下は椅子に座り、臨戦体制に入るがごとく両手を膝に置き背筋をピンと伸ばした。
小坂は両肘を机の上に置き両手の指を組み、自分の組んだ手に視線を落とした。少し間をおき、表情を作ってから竹下に視線を移した。小坂の表情は穏やかで、竹下とは対照的だ。
「確かに、少し、わがままなのかもしれない。しかし、お客様の要望に応えるのが私達の使命でもあるわけだから、お客様の要望を無視するわけにはいかないだろう」
マニュアル的な返答に竹下は少しイラついた。
「他のお客様はレジに並んでくれています。あの人だけ特別扱いするのは、どうかと思います。もし他のお客様まで時間が無いと言い出したら、店長はどうするおつもりですか?」竹下は膝の上に置いてあった両手を机の上に置いた。机を叩きたかったのを堪えた。
「そうなったら、ひとりひとりのお客様に満足してもらう方法を考えるしかないだろう。それが私達の仕事だ」
「限界がありますし、それなら言った者勝ちになりませんか? 何も言わなければ、そのまま並んで待たされて、文句を言えば優遇される。正直者がバカをみるような事、そんな事は許されません」
「サービスに限界を決めつけてしまうことはよくない。私達はお客様のご要望に対して出来る限りのことをやるべきだ」
竹下は小坂の言葉に納得いかない様子だ。綺麗事にしか聞こえなかった。机の上に置いていた手を今度はぐっと握りしめた。
「わたしには店長の考えが理解出来ません」
いつも温厚で、にこやかな竹下とは別人のようだと小坂は思った。小坂の表情も穏やかではなくなってきた。
小坂は少し間を置いた。椅子の背もたれに体を預け両手の指を組んで後頭部にまわした。
「それなら、竹下さんなら、あの時どうした?」小坂は少しムキになってきた。
竹下もムキになったようで、体が前のめりになった。
「レジに並んでもらうしかないと説明して、それが嫌なら買い物せずに帰ってもらいます」
「せっかく、買い物に来てくれているんだぞ。それなのに帰ってもらうのか」
「はい、お客様全員に平等に満足してもらう為です」
小坂は頭を掻いた。
「確かに、私の判断が正しかったかは、わからない。レジに並んでいるお客様の中には、口には出さないがあのお客様を見て不満に思ったかもしれない」
「私はあの時の店長の判断は間違っていたと思います」竹下は小坂の目をじっと見て、強い口調で、言った。
「……」竹下にはっきり否定されて小坂は言葉を失った。
小坂は自分のとった行動で竹下を不快にしてしまったことに反省し、天井へ目をやった。あの時、どうすればよかったのか、小坂は考え込んだ。竹下の言う通り断るべきだったかもしれない。断っていれば、どうなっていただろう? あの女性客が、あっさり引き下がってレジに並んでくれただろうか。いや、ひと悶着はあっただろう。それでも良かったのだろうか? 他のお客様は、従業員とお客様が揉めていたら不快にはならないだろうか?頭の中が混乱した。
少し沈黙があった。
「店長、どうされましたか」竹下が沈黙を嫌い小坂に声を掛けた。
「あっ、ごめん。考え込んでしまってたよ。あの時どうすべきだったのか、わからなくなって」小坂は竹下に向かって苦笑した。
竹下は前のめりになった体を戻し、手を膝の上に戻して俯いた。興奮して言い過ぎたと反省した。あの場で、どうすべきかが難しいことはベテランの竹下にも理解出来た。
「店長、申し訳ありません。店長のとった行動に批判的な意見をぶつけてしまいました。私も店長の立場なら、本当にお断り出来たのか自信はありません」竹下は立ち上がり、頭を下げた。
「いいよいいよ、それより接客って難しいな。それを考えるいい機会になったよ」
竹下は頭を上げて、小坂の話しに同調するように深く頷いた。そして竹下は自分の悩みを話し始めた。
「最近、わがままな人が増えているように思います。それは過剰なサービスのせいではないかなと悩んでいます」竹下は最初の強い口調ではなく、おだやかな口調に変わっていた。
小坂は竹下にもう一度椅子に掛けるように促した。竹下は椅子に腰掛け背筋を伸ばした。今度は臨戦体制ではなく、小坂に敬意を示すようだった。
「お客様の要望は、多種多様で対応出来ないことも多くなってきて悩んでいます。朝の人のように、レジで待ちたくない、それ以外にも味が気に入らない、値段が高い、空調が暑い、寒い、ほしい物が無い等、ほんとにキリがないです。それらに、ひとつひとつ対応していかないといけない気持ちもありますが、そのせいで、気にくわないことを言えば、なんとかしてくれると思っている人が増えているんじゃないかと思うことがあります。これが本当に正しいサービスなのかと悩んでいます。人をダメにしているような気さえしてしまいます」
それは小坂も感じていた。しかし、店長としてお客様を否定することになると思い、心にしまい込んでいた。竹下もレジの責任者として言うべきことではないと思っていたが、小坂には言ってもよいと思った。
「日本人のおもてなしの精神は素晴らしいことだと誇りに思います。しかし、それを受ける側が当たり前のようになって、わがままになってしまうことが残念です」
小坂は深く頷いた。
「確かに、ちょっとした事で怒る人は増えたように感じる。しかし、私達の立場でそれを口にすることが出来ない。本当は言いたくなる『それぐらい我慢しろよ』とね」
「やっぱり店長でも思うんですね」竹下は少し笑みを浮かべ、小坂も自分と同じなんだと思い、気持ちが楽になった。
「お客様は神様なんだろうか?」小坂が竹下に問いかけた。竹下はしばらく考えてから口を開いた。
「神様だと思うようにしていますが、今日みたいなことがあると悩んでしまいます。結局、自分の限界、対応出来なくなった時に壁にぶつかってしまいます」
「高級ホテルや高級旅館は、本当にすごいなと思うよ。お客様第一主義を徹底しているもんな。彼らには限界はないのかな?」
「自分達で限界を決めていないんでしょうね、出来る限りのことを考えているんだと思います。私も自分の限界を上げていくように頑張ってみます。店長、お忙しい中、時間をとって頂き有難うございました」
朝の出来事で出来た小坂と竹下の小さな溝は無くなっていた。
③ 親睦会の店員
「はい、いらっしゃい、何名様ですか」
竹下が親指を折り、残りの指を立てた。
「4名様、すぐに案内しますね、少々お待ち下さい」
若い女性店員が早口で言った。髪の毛が茶色く真っ赤な口紅をした目が大きいチャーミングな女の子だ。小坂は最近テレビでよく見るおバカキャラの女性タレントに似ているなと思って見ていた。
竹下は、平日なので、空いていると思っていたが、ほぼ満席なのにビックリした。
「平日なんで、ゆっくり話せると思ってたんですが、忙しそうですね。先に調べておけばよかったです」
竹下が店内を見渡しながら、申し訳なさそうに言った。
「それだけ人気のある店ってことだからいいんじゃない」小坂はさっきの女性店員を目で追いながら言った。
「あそこの席みたいですね」竹下は女性店員が一番奥のテーブルを片付けている姿を見て言った。
「ごめんなさい、おまたせしました。どうぞ」女性店員は真っ赤な口角を上げて、愛らしい表情を見せた。
小坂達は女性店員について席へと向かった。
「おーい、ビールもらえる」
小坂達がテーブルへ案内されてる途中で右側の席から大きな声が飛んできた。中年サラリーマンは、だいぶ出来上がっているようだ。空になったジョッキを持ち上げて女性店員にむけた。
「少々お待ち下さいね、すぐに行きます」女性店員は右側を見て口角を上げて言った。
「早くしろよ、バカヤロー」サラリーマンはイラついた口調だ。
「はーい、すぐに行きますね」女性店員は、もう一度口角を上げてサラリーマンに視線を送った。
竹下は右側のサラリーマンを怪訝な目で見ながら席へと向かった。
「こちらのテーブルです。どうぞ」女性店員は、明るく小坂達を案内した。
「お飲物、お伺いします」小坂達は、各々が飲みたい物を女性店員に告げた。女性店員は復唱し、ニコッと笑って、小坂達の席から離れ、サラリーマンの席に向かっていった。
「どうも、お待たせしました。ご注文どうぞ」小坂の耳に女性店員の明るい声が届いた。
「やけに明るい娘だな」浅井は思った。
しかし、サラリーマンはいら立った様子だ。
「遅いんだよ、他に店員いないのかよ」
「ごめんなさい、ご注文どうぞ」女性店員は、動じることなく、また口角を上げて注文を聞いていた。
「ああいう客見ると腹がたってくるわ。少しくらい待ちなさいよね」竹下はメニューを見ていたが、一瞬、視線をサラリーマンに向けた。
小坂は今日の朝の件を思い出した。多分、竹下も朝の件を思い出しているのだろうと思った。
「お前、客が呼んだら、すぐに来いよ」サラリーマンはまだ続けている。
「ごめんなさい、急いで来たつもりなんですけどね」
「つもりじゃ駄目、客が呼んだら、すぐに来いよ」
「ごめんなさい。お客さん、ご注文は?」女性店員の声は明るいままだ。全く動揺していない。
「おい、こっちを急かすんじゃねえよ。お前、客に対する態度じゃねえだろ。一段とムカついたわ。お詫びに料理1品くらいおまけしろ」
竹下の表情は険しくなる一方だ。女性店員は相変わらず態度は変わらない。
「ごめんなさい、1品おまけは出来ないです。次は出来るだけ早くしますね。お客さん、せっかくだから楽しんで帰って下さいよ」女性店員はペースを乱すことなく対応していた。
サラリーマンの連れは部下なのか、困惑した表情で座っていた。
「おい、帰ろうか? この店いると酒がまずくなる」部下らしき男にそう言って立ち上がった。
「あっ、はい」部下らしき男も立ち上がった。
サラリーマンは会計のところでも、何やら文句を言っているようだったが、小坂達のところまでは聞こえてこなかった。
女性店員は大きな声を張り上げた。「ありがとうございました」そしてサラリーマンに向けて紅い口角を上げていた。
サラリーマンは女性店員の方を睨んでから店を出ていった。
女性店員が小坂達のテーブルに飲み物を持ってやって来た。各自が注文した飲み物を受け取り、女性店員は注文をとり始めた。「料理はお決まりですか」
小坂も竹下も女性店員とサラリーマンのやりとりに気をとられてメニューをあまり見ていなかった。
「とりあえずお造り盛合せと焼鳥盛合せで、後は、また注文するわ」小坂は慌てて適当に頼んだ。
「ところで、さっきの客、うるさかったね」小坂が女性店員に優しく声を掛けた。
「そうでしたか、ごめんなさいね」小坂は女性店員が、あまり気にしていないようなのに驚いた。
「君は、さっきの客に腹がたたなかったの」小坂が訊くと、女性店員は首を傾げた。
「いえ、別に腹がたつことはなかったですけど」
「俺は客だぞみたいな感じで、態度悪くなかった? 聞いてて気分が悪くなったんだけど」
「そうでしたか? ごめんなさい、あたしバカだから、あまり気にならないのかもしれないです」女性店員はそう言うと、これまで通りにニッコリした。
「みんなが楽しんでくれたら、それでいいんです。あたしも楽しいから、でもさっきのお客さんは楽しめなかったみたいだから、それは残念だなと思いますけど」
「あなたは、お客さんから怒られても楽しいわけ?」竹下も女性店員に質問をぶつけた。
「怒られてですか? お客さんからお願いされることはありますけど、怒られたことはないんでわかりません」女性店員はまた首を傾げた。
「変な質問してごめんなさい。じゃあ、あなたのおすすめの料理を教えて、それを注文するわ」竹下は女性店員の顔を見て優しい表情になった。小坂も表情が優しくなった。
「あたしのおすすめですか? そうですね、あたし大阪出身だから、やっぱりたこ焼きかなぁ」女性店員は紅い口角を上げた。
「じゃあ、たこ焼きを4つお願い」
「すいませーん、ビール」後ろテーブルのお客さんから注文する声が聞こえた。
「はーい、すぐに行きますね」女性店員は元気な声で応えた。
「ここは注文終わりだから、あっちのお客さんところ行ってあげて」竹下がそう言うと、女性店員は「ありがとうございます」と言って、後ろのテーブルへ向かった。
「おまたせしました。ご注文どうぞ」女性店員の明るい声が店内に響いた。
小坂達は4人で乾杯した。