小説を読もう「火の粉 雫井脩介」の言葉表現2
小説が好きで、表現をの仕方まとめただけの資料です。
「これはこれは」口の端を歪めた独特の笑顔で野見山が近づいてくる。
「どうしてまたそんなことを?」
野見山はもどかしいほどゆっくりした喋り方で訊く。
ただ、その眼つきに油断は感じられない。
野見山はもどかしいほどゆっくりした喋り方で訊く。
ただ、その眼つきに油断は感じられない。
煙草で勲を指す。「つまりこういうことでしょう。あなたは今まで裁判官席という風上から、下々で起こる事件をまさに他人事として裁いていた。ところが今度、急に風向きが変わって自分のところに火の粉が降りかかってきたものだから、びっくりして慌てふためいているわけです」
「それもあまり感心しませんね」野見山は爽やかさのない笑みを浮かべた。
尋恵は身体を凍りつかせた。
人の気配を部屋の中に感じた。
まさか……そう思い、背中を撫でる空気の動きの正体を見極める。
人の気配を部屋の中に感じた。
まさか……そう思い、背中を撫でる空気の動きの正体を見極める。
鳥越は片眼を細めて訊く。垂れ気味の目尻は人よさそうでもあり、抜け目がなさそうでもある。
いきなり落ち着きの悪い話を始めた鳥越は、二本目の煙草に手を伸ばし、狭い部屋を白く煙らせた。
鳥越はしばらく乾いた笑い声を上げていたが、それが引いたところでふと眼をつむり、肩こりをほぐすようにゆっくりと首を回し始めた。何かの記憶をじっと吟味しているようでもあった。
彼女が強いショックを受けたのは明らかだった。唇は開いたまま硬直し、眼を盛んにしばたたかせて、喜怒哀楽のどれにも属さない表情を見せた。
笑顔で挨拶を返しながら、何かが雪見の心に引っかかった。まどかと一緒に遊んでくれてたときにも見たその光景が、ざらりと砂を噛んだような違和感をもたらした。