超短編小説
「俺もそろそろ、ここから去ることにするわ」「えっ、先輩も去ってしまうんですか、みんな居なくなって寂しいです。もう少し頑張って下さいよ」「ここは居づらくなって、そろそろ限界なんだ。お前も無理してるんだろ。体が真っ白になってるぞ」「確かにきつ…
ここは雑居ビルの4階にある探偵事務所。 若い女性が相談にやって来ていた。女性は20代前半、おとなしい印象だが、少しいらついている様子だ。「ストーカーの相談で警察に行ってみたけど、相手にされなかったので、ここの探偵事務所に来たということでしょう…
帰宅途中の電車内、中途半端な混み具合で、少し席を詰めてくれれば座れるのだが、前に座るカップルは、全く、その気は無さそうだ。明日のデートの予定で盛り上がっているようだ。 「明日はどこ行くの」 派手で大人びた化粧をしているが、まだ、それが板につ…
新井孝夫は最終電車に乗っていた。つり革にぶら下がるような体制で立ち目を閉じてうなだれていた。うなだれているが落ち込んでいるわけではない。口元は笑っていた。 ガタイのいい男が社内で目を閉じうつむいて笑っている姿は不気味だ。他の乗客は孝夫から少…
「あー、見つけたぁ、真由~」 高橋彩花は小さく手を振りながら早足で歩いてきて、酒井真由の席の横に腰を下ろした。真由は大学の講義が終わりノートや教科書をトントンと揃え片付けているところだった。彩花とは大学に入学してから知り合ったのだが、人見知…
「山中、こないだのテストの成績が学年トップじゃないか、凄いなぁ」 昼休み、僕の前に座る宮川が後ろに座る僕に体を向けて、そう言った。 「ありがとう」 僕は礼を言った。 僕、山中和也は、この間のテストで学年トップの成績をとった。これまではベストテ…
「俺もそろそろ、ここから去ることにするわ」 「えっ、先輩も去ってしまうんですか、みんな居なくなって寂しいです。もう少し頑張って下さいよ」 「ここは居づらくなって、そろそろ限界なんだ。お前も無理してるんだろ。体が真っ白になってるぞ」 「確かにき…
「いらっしゃいませ、人生、お疲れさまでした」 「こ、ここはどこですか」 「死後の世界です」 「死、死後……ですか、……ということは私は死んだのですか」 「そうです、あなたの人生は終了しました。今からあなたの審判に入るところです」 「審判……、ですか。…
誰もが着ている衣類が会話を始めたら、どんな会話をしているのでしょうか? この短編小説は、それぞれの衣類の言い分を言い合ってバラバラになる様子を表現しています。チームワークの大切さを気づかせる作品です。 コートとセーターとスカートの会話そこに…
心の声が聞こえる 主人公には、不思議な能力がある。それは、他人の心の声が聞こえることだ。 この能力が主人公にとってプラスになっているかというと、そういうわけではなさそうだ。 恋愛や仕事に生かせそうで、生かせない。 心の声が聞こえる
大山家は夕食を終え、主の隆弘はこたつに入り写真を眺めていた。妻の美香も夕食の片付けを終わらせて、熱めの緑茶を持って隆弘の左側に座った。 「明日は陽菜の結婚式だな」隆弘は緑茶を口にしながら頬を緩めた。「そうですね、早いですね」美香は湯飲みを…
「どうも~、カナケンでーす」 「俺の本名が真中健で、相方のこの女が、本木加奈です。2人の下の名前をくっつけただけのコンビ名ですが、覚えてやってください」 「加奈ちゃんを可愛いと言う男がおったら、俺はビックリして気絶するわ」 「失礼やね、あたし…
神様のノルマ 神様の世界も人間を幸福にするというノルマがあるようだ。担当地区の幸福度が低いと神様として失格らしい。日本人の幸福度が低い為、日本の神様も人間と同様に大変なようだ。今も神様達が会議室に集まり頭を悩ませている。 「日本人の幸福度が…
先月、俺は婚約をした。相手は美咲という名で、3年前に友人の紹介で知り合った。俺の一目惚れだった。知り合ってから、俺は必死で口説き、付き合うことが出来た。 しかし、婚約してからは、よく喧嘩するようになり、このまま結婚して大丈夫なのだろうかと不…
「君は何で上ばかり見てるの? 上を見ても、何にもないでしょ」「いいや、上を見れば空が見えるよ。雲もあれば太陽もある。夜なら月や星も見える」「まあ、そうだろうけど、そんなもの見てもしかたないじゃない」「そんなことないよ、俺は空を見れば、夢や希…
真っ直ぐで低い位置にある感情線を持つ男、山村健太の話 感情線が真っ直ぐで低い位置にある人は、感情を表に出さない冷静で合理的な人です。この超短編小説は、真っ直ぐで低い位置にある感情線を持つ男、山村健太のお話です。山村健太と恋人の宮坂みゆきの会…
「どうも~、カナケンでーす」 「俺の本名が真中健で、相方のこの女が、本木加奈です。2人の下の名前をくっつけただけのコンビ名ですが、覚えてやってください」 「加奈ちゃんを可愛いと言う男がおったら、俺はビックリして気絶するわ」 「失礼やね、あたし…
ここは雑居ビルの4階にある探偵事務所。 若い女性が相談にやって来ていた。女性は20代前半、おとなしい印象だが、少しいらついている様子だ。「ストーカーの相談で警察に行ってみたけど、相手にされなかったので、ここの探偵事務所に来たということでしょう…