私の好きな田中経一作品
逆流
あらすじ
勅使河原は小さな芸能事務所社長で、所属するタレント弓月苺が誘拐された。弓月苺は強運の持ち主で、何もかもがうまくいきすぎて、CMや映画の出演を決めていった。勅使河原は三ヶ月ほど前から、記憶から過去の出来事がぽろぽろと抜け落ちるようになった。いま頼りになるのは一日中書き込んだメモ紙と日記だ。
弓月苺が誘拐されてから、日記をよみかえし、記憶が抜けているところを繋ぎ合わせていくと、あることが見えてきた。
弓月苺の秘密や誘拐された理由などが明らかになっていく。
二〇一八年 七月七日
芸能事務所「ドラゴンプロモーション」の社長、勅使河原竜太は、所属俳優、神埼徹の覚せい剤の所持と使用の疑いで逮捕された神埼徹の保釈と報道陣への儀式を済ませた。今日の本番はこれからだ。所属タレント弓月苺が誘拐されていた。身代金二億円、一億でもなく三億でもなく二億円、この金額の持つ意味がある。
勅使河原は警察に内緒で身代金を持って引き渡し場所に向かう大仕事をするつもりだ。
そしてその前に勅使河原は昨日七月六日から神埼が逮捕された五月十日までの日記を頭に叩き込んでおかないといけなかった。
七月六日(前日)
明日の午後三時に神埼徹の保釈が決まる。その後、苺の事件が発覚した。マネージャーから電話があった。苺がオーディションに来なかった。
その後、声質を変えて変な電話がある。ネット動画で弓月苺をみるように言って切れた。動画を見て弓月苺が誘拐されたことがわかった。弓月苺は椅子に座らされ、膝に置いた手首に黒い手錠がかかっていた。勅使河原はこの手錠を遠くない過去で見ている。
そしてズボンのポケットからメモを見つける。『7月6日午前六時半 校門前』それは苺と約束したものだったが、記憶にはない。
そしてバラエティタレントの夢野リナが退職願を出していた。これもなぜなのか、記憶もなかった。
七月五日(二日前)
苺が出演する「水9」の新ドラマ「夢の続きを君に」の制作発表会見が開かれる。その前に苺から明日の六時半に校門の前で会う約束をしていた。ポケットにあったメモはそのことだった。
感想
誘拐事件が起こって、主人公の消えてしまった記憶をメモを見ながら過去に遡っていくストーリーで、少し混乱しました。読みづらさはあったのですが、それは私の読解力の問題でしょう。田中経一さんらしい作品で面白かったです。