おすすめ小説を読もう ミーコの宝箱 森沢明夫
内容
主人公のミーコとそれぞれの章の登場人物との短編小説になっています。ミーコは優しい祖父と厳しい祖母に育てられる。祖父から毎日宝物をみつけなさいと祖父お手製の桐でできた宝箱をクリスマスプレゼントにもらう。宝箱のフタの裏側に祖母が手鏡をつけてほしいと祖父にお願いしてつけてもらう。祖母な大切な手鏡をつけた理由が最後にわかります。
各章のテーマは家族の愛情。
登場人物はそれぞれ心に闇を持っていますが、ミーコの存在で癒しや勇気をもらいます。ほのぼのとした気持ちになり、そして胸が熱くなります。そして登場人物とミーコの別れに切なくなります。それぞれの章でいろんな感動を味わってください。
書き出し
わたしのたったひとりの家族の名前は、幸子という。小学一年生の女の子だ。
幼稚園を卒園してランドセルを背負うようになってから、身の回りのいろんなことが分かりはじめて、だいぶおしゃまになってはきたけれど、それでもまだやっぱり言動のあちこちからきらきらした幼児の無垢さを発散させているから、思わずぎゅーっと抱きしめたくなる。できることなら四六時中べたべたしていたいほどに愛おしい生き物だ。
幸子という名前は、他人からよく「古風で、いい名前だね」なんて言われる。でも、その褒め言葉も裏を返せば「いまどきっぽくないよね」であることくらいは充分に分かっている。それでも、わたしは幸子という名前をとても気に入っている。
幸せな子ーー。
こんなにシンプルでいい名前は、他にないと思う。
幸子のあだ名は、チーコだ。
ミーコとナベちゃん
ミーコの職業がSMの女王という設定に少しひいてしまいました。ナベちゃんはその常連ですが、この日が最後の日です。プレイ中の話と終わってから二人が喫茶店でする会話のギャップがすごい。しかし、このギャップが人間らしいのかも。
プレイ中の話は少しエッチな気分になり、喫茶店での会話は、真面目な会話で、両親のいないミーコの幼いころ祖母から受けた厳しい躾や祖父の優しさの話などで、人生の生き方を学べます。
神原泰三とシリウス
ミーコの幼い頃のお話です。ミーコの両親はミーコを捨ててしまいミーコは祖父と祖母に育てられています。両親のいないミーコを立派に育てようとするがために厳しく接するミーコの祖母。ミーコから嫌がられながらも、自分たちがいなくなったあとのことを心配しミーコのためにと愛情を注ぐ姿に感動します。
祖父がミーコに毎日宝物を見つけて入れておくための宝箱をプレゼントしますが、そのフタの裏側に祖母が手鏡をつけてほしいとお願いします。その理由が最後にわかりこれまた感動します。
下山久美とビー玉
ミーコの小学校時代の話です。ミーコのクラスメートの下山久美子はクラスのいじめに悩んでいます。自分がいじめられているわけではないが、いつ誰がいじめの対象になってしまうのかわからず、クラスの女子たちは戦々恐々とし、不安で楽しくない毎日を過ごしています。そんなクラスでミーコだけは違う存在でいました。井川奈々とアロマポット
ミーコの中学時代の話です。井川奈々は保健室の先生。ミーコは体が弱く頻繁にお世話になるため先生と生徒を越えて仲良くなっていました。井川奈々は子供の頃、母親を亡くし父親は新しい女性を連れてきたことで家族とはうまくいってません。父親も女性も井川奈々に優しくしてくれるが、それが逆に苦痛になり心を歪んでいた。そんな井川奈々が癒されるのは中学生のミーコだった。浅利文也とマフラー
対人恐怖症の浅利文也。いつも独りぼっちだった。楽しくない飲み会で酔いつぶれ駅で意識を失っている文也に心配して声をかけたのはミーコだった。その日はミーコの部屋に泊めてもらった。それ以来ふたりは付き合うのではなく「恋愛ごっこ」をはじめた。
黒木竜介とハンチング
黒木竜介はミーコが働くデルヘルの社長だ。黒木はミーコと社長と従業員というだけの関係ではなく、家族のような付き合いだった。ただ、黒木竜介にとって商品であるミーコに手は出さない。ミーコの生活を心配し応援し娘のチーコにもな好かれるおじさんだ。しかし、別れの時が突然訪れる。黒木がトラブルに巻き込まれ、デルヘルを閉め身を隠さなければならなくなる。
チーコと工芸茶
ミーコの娘、チーコが大人になり結婚する。その前日にミーコとの最後のクリスマスパーティーを過ごす。ミーコのために祖母が宝箱につけた手鏡の意味にチーコが気付き感動の展開。感動いっぱいの最終章です。